概要
パソコン内ストレージの読み書き速度は、画像・動画・3Dモデリングなどの編集作業を行う上で、生産性に関わる重要なポイントです。
ストレージとして一般的に使用されているSSDは、2019年以降からPCIe4.0(Gen.4)対応製品が登場し、データ転送速度が上昇しました。
今までPCIe3.0(Gen.3)品を使用しておりましたが、当初より価格が落ち着いてきたので、奮発して最新のPCIe4.0対応製品を購入してみました。
そこで今回は、使用していたPCIe3.0対応SSDとの間で体感差を得られるのか、アプリケーション起動時間の観点で調べてみました。
環境
今回はこちらの2点で比較を行いました。
メーカー | ADATA | CFD |
製品名 | SX8200Pro | PG4VNZ |
型番 | ASX8200PNP-1TT-C | CSSD-M2M1TPG4VNZ |
容量 | 1TB | 1TB |
フォームファクター | M.2-2280 | M.2-2280 |
インターフェース | PCI-Express 3.0 (x4) | PCI Express 4.0 (x4) |
コントローラー | SMI SM2262EN | Phison PS5018-E18 |
ファームウェア | 42AZS6AC | EIFM21.1 |
シーケンシャルリード | 3500MB/s | 7000 MB/s |
シーケンシャルライト | 3000MB/s | 5500 MB/s |
ランダムリード | 390K IOPS | 350K IOPS |
ランダムライト | 380K IOPS | 700K IOPS |
今まで使用していたSX8200Proは幅広いPCIe3.0製品の中でも比較的高速な部類です。
PCIe4.0製品は、第2世代Gen.4モデルと言われる「PHISON PS5018-E18」搭載品のひとつであるPG4VNZを購入しました。
なお、普段使用しているこちらの環境で測定しました。
M/B | x570 Taichi p4.10 |
CPU | Ryzen9 3950x |
RAM | 32GB (DDR4 3733) |
GPU | RTX2080Ti 11GB |
OS | Windows10 x64 20H2 |
結果
結論から言うと、ほとんど変わりませんでした。
データ転送速度比較
はじめに、両SSDのデータ転送速度を表すベンチマーク結果を掲載します。
CrystalDiskMarkの見方として、左側の列がデータの読み込み速度、右側の列がデータの書き込み速度となります。
行項目については最上行がシーケンシャルアクセス、2、3行目がランダムアクセス時の速度と判断しています。(私はあまり詳しくないですが、最下行は実用項目ではないとのこと。参考)
これらの図より、概ねスペックシート通りの性能が出ていることが確認できます。
ランダムアクセスについて、PG4VNZのQ32T1Writeが「293.3」とSX8200Proの半分ちょい程度なのがスペックシートと比べて逆転している点として気になりますね。
アプリケーション起動時間比較
次に、割とよく使用するアプリケーションの起動時間を調べました。
今回、8種類のアプリケーションを対象としました。計測にあたり、キャッシュされる前の初回起動のみを対象とし、目視でストップウォッチアプリにて3回の平均値を取りました。
以下が、各アプリケーションの起動にかかった時間の比較となります。
アプリケーション | バージョン | 起動時間[秒]: SX8200Pro | 起動時間[秒]: PG4VNZ | 差[秒] |
Davinci resolve | 17.4 | 28.37 | 27.64 | -0.72 |
Blender | 2.90.0 | 25.13 | 24.58 | -0.54 |
itunes | 12.11.3.17 | 23.09 | 22.99 | -0.09 |
Unreal Engine | 4.25.3 | 21.44 | 21.02 | -0.43 |
Steam | Oct13 2021 | 17.17 | 16.97 | -0.20 |
Vroid studio | 1.0.1 | 8.60 | 8.98 | 0.38 |
Gimp | 2.10.12 | 7.91 | 7.65 | -0.25 |
Affinity designer | 1.10.0 | 7.28 | 6.97 | -0.31 |
一覧表より、いずれも起動時間の差が1秒未満でした。割合換算した場合も±5%未満の範囲だったため、計測方法からして両者にほぼ差がないことが読み取れます。
数字では分かりづらいため、以下にグラフを作成しました。
若干ではありますが、PCIe4.0に対応しているPG4VNZの方が起動が短いケースが多いことが読み取れます。
考察
よくよく考えれば今回のSSD、両者間でランダムアクセス速度にほぼ差がないですね。
アプリケーションの起動時間にはランダムアクセス速度が重要なので、大して変わらない結果になったと思われます。
最新規格への買い替えによって今回のケース以上に恩恵を受けるには、
- PCIe4.0対応製品の中でも、ランダムアクセス速度が高い上位モデルの購入
- 大型ゲームのプレイなど、大容量のデータ転送を頻繁に行うような使用環境
などが必要なのかなと思います。
感想、まとめ
「NVMe SSD、Gen3→Gen4で違いを体感できるの??」に対して、私は残念ながら違いを体感できませんでした。。
結果からみて、あまり作業時間の短縮には繋がらないため、特に買い換える必要はありませんでしたね。
各種編集ソフトは立ち上がりに時間がかかるので、短くなったらいいなぁと思いましたが、ちょっと当てが外れました。
一方で僅かばかりなものの、数値自体としてはPCIe4.0品の方が速くなっていることが分かった点は、今回測定してよかったと思いました。
主観としてPCIe3.0を使用されている方は、2021年現在PCIe4.0を搭載することに実作業面であまり大きな影響は与えないのかなと感じました。
環境改善を検討している場合、優先度としては他の部品に予算を回した方が全体の向上につながるかと思います。
2.5インチSSDやM.2 SATA SSDなど、SATA接続方式のSSDを使用されている場合であれば、ランダムアクセス速度が大きく向上するため、買い替えによる恩恵を得られるかもしれませんね。
参考
自作ユーザーが解説するゲーミングPCガイド,「その他の単機能ベンチマークソフトについて」(2021/11/14)
より詳細な製品情報は、メーカーホームページをご確認ください。