1. 概要
イベントを企画・主催するということは、多くの人々が共に時間を過ごす場を作ることです。今回のイベントの開催目的は、出来るだけ多くの人がこれからを前向きな気持ちで迎えられるような感情を互いに共有する場の実現でした。また、その実現にあたり私の持つ技術的な手札を最大限に活用して、イベントを推進・実現させることも目的の一つでした。
この記事では、私がメタバース空間のClusterにて主催したイベントについて、企画・実施の経緯、意図、反省点などを振り返ってみたいと思います。
1-1. イベントの企画
イベントの企画を立てるにあたって、まずは需要を見極めることが必要でした。成功させるためには、どのような内容でイベントを開催するのか、どのような人に協力し、どのような人を招待するのか、何を目的とするのかなどを明確にする必要がありました。需要の見込みがあるテーマを定める上で、私が意識したポイントを以下に並べてみました。
1-2. テーマ決定に向けて意識したポイント
大別して2つの要素を定めました。1つはどの様な内容であれ、揺るがない部分として「理念」、もう一方は組み上げていくにあたって考慮が必要なポイントを「要素」と表現してみました。
以下の内容は、イベント自体の根幹となる項目のため、後の章でも変わった表現で記載が行われているかと思います。
1-2-1. 理念
1つずつ、トピックと解説という流れで記載を進めます。
自分自身の活動方針に沿うこと
私の活動目的は「技術的な面で人に寄り添い、笑顔で前向きな気持ちの方と楽しい時間を共有すること」です。この活動方針に沿っていることは、揺るがない前提条件でした。
「私」が主体性を持って取り組むこと
こちらも外せない項目として考慮しました。例えば「既に知名度を持つ方やその実施企画に対して仲間に入れてもらい、その中でイベントに携わる」というのは検討から外しました。既に存在するグループの知名度にあやかるなど、肩書きの力に依存することなく実現させることを要件として目指しました。
「誰がやるか」ではなく「何をするか」を主軸にすること
キャラクター性や知名度を利用してイベントを行う手段もあります。しかし、いわゆるインフルエンサー性など人気面に頼ったイベント内容では、長い目で見た際の再現性に限界があると感じました。そこで今回はイベントの”内容自体”が主役となりうることを必要要素として定めました。
自給自足で実現できうること
大前提として、仮に「自分一人であったとしても小さくすれば実現可能なもの」という要件としました。例えば、自分では全く理解していないような分野の内容をテーマに据えるといった自体が生じないように意識しました。その上で、人と協力してイベントを最大限拡張・発展させるとすれば、自分で行うよりも他の方にお願いした方が全体品質の最大化を図れる領域については、役割を委譲していくような形式としました。
現状の作業イベントとシナジーを持たせること
執筆時点にて、Cluster上にて「集まって作業する」というシンプルな趣旨のイベントを隔週頻度で開催しています。今回のイベントもあくまでも、この作業イベントでの経験値も含めた関連性・発展性を持たせた上で実現できるようなテーマ選定としました。
エンタメではなく、教育・学びのカテゴリであること
あくまでもソニリアおよび、時の行き交いのカテゴリは「教育・学び」が軸であり、知識欲が満たされることによる喜びや楽しさの共有を趣旨としています。歌や劇といったエンターテイメント性を主軸としたテーマ選定では畑違いになってしまうため、逸れないように意識しました。
模倣困難性が高いものであること
誰でもやろうと思えば簡単に実現できる内容や水準であることは、避けることを要件としました。理由としては、過去にClusterで作業イベントを開催した際、後日そのイベント参加者に安易な形で露骨に模倣され、ちょっとショックを受けたためです。私は協力的な立場として、一定の知恵を絞った上で活動を実施しています。これに対し、雑に上澄みだけ自分の物にして利用しようとするスタンスをされてしまうと、私が目指す活動や未来とは相反してしまいます。そこで今回は、主催者自らが高い技術的スキルを持って初めて実現しうる水準の質・テーマを目指しました。
1-2-2. 要素
以降は理念を踏まえつつ、テーマを練っていくにあたり考慮に入れたポイントを記載しました。
自身の属する界隈に閉じたコンテンツは避ける
例えば、私は理系出身のITエンジニアのため「理系」や「ITエンジニア」向けといった趣旨のテーマであれば、自分の価値観に寄せやすいため、多少のやりやすさはあるかもしれません。しかし、現在の自分の属性に範囲を狭めたテーマでは、周りの方々との繋がりまで固定化されてしまうため、極力特定の人向けとして閉じたテーマであると受け止められないよう、調整を進めました。
別々の役割を立てた複数人体制での実施
イベントを実現するにあたり、全員に同一の役割を持たせるのではなく、できる限り分散させるような体制を意識しました。事前調査で多人数で実施されているイベントを眺めていた際、1人くらい参加してなくても、成立するようなイベントも存在しそうだなという印象を受けました。そこで今回は、メンバーの一人ひとりが必要不可欠なピースである体制を前提とし、イベントに訪れた方からもそのように見える設計を目指しました。そのため、役割の分散が見込めないようなテーマは選択肢から外しました。
三方よしの設計を行う
誰かが貧乏くじを引くような自体が発生しないことを考慮に入れて進めました。「私自身」「イベントに携わるメンバー」「イベント来場者」、この三方がいずれも何らかのメリットを享受でき、それぞれがイベントへの関わりを通じて今後を前向きに過ごせるよう、考慮して設計を進めました。
テーマの成立条件自体のハードルを下げる
イベント自体の成功を判断するにあたり、できる限り少ない人数の来場でもそれが成立しうることを目指しました。例えば「100名以上来場しないとイベント内で企画が実施できない」といった、ハードルの高さで主催側の首が締まるようなテーマは避けることとしました。逆に、仮に1名もイベントに来場しなかったとしても、私自身やイベントに携わるメンバーの間において、まるっきり無駄にならずに、得られる知識や学びがあるような企画であることを理想として進めました。
来場者から見てハードルの高いイベントは避ける
界隈に閉じたコンテンツと近い内容ですが、一定の専門性を持つ人のみ関心を示すようなテーマ設定も選択肢から外しました。逆にどんな人から見ても、興味があれば足を運べるような内容であることを目指し、細部で工夫ができるような内容を目指しました。
Vtuberの視点にとらわれず郷に従ったものであること
Vtuberがyoutube内容の延長線上として、Clusterを活用してイベントを開催している事例もよく見受けられます。一定の影響力があるケースであれば、この形式も実現するかもしれませんが、仮に私が同じ手段を採ると成功しうるハードルがかなり上がってしまいます。そこで、あくまでもCluster利用者から見ても関心が持てるようなテーマであることを念頭に入れて選定を進めました。
来場者側から見てわかるような、全員で作り上げた表現の取り入れ
イベントメンバー全員が主役であることを、その場で初めて見た人でも感じ取れることが重要な視点だと感じました。主催者を含め、極端に特定の人物にスポットライトが浴びたり、またその逆が生じる設計にはならないよう、視覚的にも分散が実現できている状態を目標に据えてイベント設計を考えました。
1-3. (作業イベントの実施目的)
2023年1月より「メタバース空間で集まって作業をする」という趣旨のClusterイベントを開催しています。この節では、補足としてこの作業イベントの目的について触れようと思います。以下が目的になります。
同志との接点を持つこと
私は技術的な面で寄り添うことを目的として活動しています。平日金曜の夜22時という、多くの方々はしがらみから解放されてリラックスしているであろう時間帯の中、自分を律して作業をする人がイベントに訪れていると推測されます。何らかの目的意識を持って日々を過ごされている方と同じ時間を過ごすことは、私としても刺激になります。また、私が協力できる部分への気づきに繋がるのではないかという趣旨で開催しています。
継続的な活動の表現
私は活動自体、2020年9月に発足し現在に至ります。しかし、動画やブログなど高頻度で公開を行なっている活動形態ではないため、客観的にみて活動しているのかわかりづらい状態とも感じています。そこで、私自身継続的に活動を行っていることが表現できる一つの手段を目的として定期的にイベントを実施しています。
負担をかけない活動手段の実現
私の活動形式は、比較的公表までに時間を要するものが割合として多くを占めます。そのため、露出面に課題を持っているという認識はあります。そこで日々の活動に組み込んだとしても、あまり負担がかからない形式での活動を実現するといった意図で実施しています。
自身の継続学習
余暇は誰でも遊びたいものです。私ものんびり過ごしたいですが、それはそれとして積み上げも必要であると捉えています。定期的に人前で作業を行うことで、継続的に自分を律することができればという趣旨も含んでいます。
ゲーム開発の推進
HellPrideさんは、発足時よりゲーム制作を行っています。この数年活動する中で、なかなか安定的に進捗を上げるのは、モチベーション面としても容易ではなさそうな印象を受けています。作業イベントに参加してもらうことにより、継続的なゲーム開発の進捗に繋げるという趣旨も含まれています。
2. テーマの決定
今回のイベントは、駆けだし ワールドクリエイターの発表・交流会と定めました。理由は複数がありますが、一番大きな要素は「ワールド制作者」と「ワールド巡りが好きな人」の間に隔たりがあり、ここを結びつけることには需要があると感じたからです。
2-1. 経緯
1月以降、作業イベントを開催していてClusterワールドの制作者の参加が比較的多いことに気が付きました。基本的に、ワールド制作は個人で行うことであるため、どこか自分との戦いという一面を持つ印象があります。その中でも、みんなで作業する場に訪れるというのは、制作者から見て人との関わりが持てる機会は需要があるのかなと感じました。同時に私自身としても、作業イベントを開くことで、自らが制作したワールド内で人と交流できることに対して、制作時に切望していたことでもあり、非常に大きな喜びがありました。それと同時に、恐らく著名なクリエイターでない限りは「自身が公開したワールドに人を招き交流する」という体験は思いのほか容易に実現できるものではないのかなと感じました。
他方で、好んでワールド巡りを行うCluster利用者が一定数いることは認識していました。巡ることを趣旨としたイベントや、巡ったワールドを発信する人もいます。しかし見る限り、そのワールド制作者本人に対して直接アポイントを取り、話しを聞くような行動まで起こす人や企画は割合として非常に少ない印象を感じました。推測の域でしたが、単に手間がかかるから行動を避けていただけで、ワールド自体に対する制作背景や想いについて関心を持つ層は、確実に存在すると感じました。
ここまでの仮説を立てた上で相談したところ、視点に誤りはなさそうであったため、詳細設計へと移りました。
2-2. 決定理由
ほか、経緯に書ききれなかったイベントの決定理由について、補足を行っていきます。
Tokikaiとして構想があった 2021.7.12
元々、時の行き交いとしてVtuber活動を行う上での方向性として、この立場を活かしたクリエイターさんとの協同という趣旨は、2021年7月12日時点での進捗会で議題に上げていました。そのため、活動趣旨ともズレがないということで本テーマを進めることとしました。
ClusterとYoutubeを繋げる接点
これまでの“時の行き交い”の課題として、Clusterにおける活動がYoutube上での活動とリンクしておらず、片手落ち状態であることを認識していました。本テーマであれば普段の作業イベントとは異なり、実のあるコンテンツとしてYoutube上で公開することも可能であり、Clusterとの関連性を持たせることも充分可能であると感じました。
「駆けだし」とした理由
1点目として、イベントメンバー側の精神的ハードルを下げる意図がありました。事前調査の段階で、ワールド制作をできる人が発表を行うにあたり、発表者のスキルレベルの高低はイベント来場者の人数増減に与える要因として最重要要素にはなり得ないと感じました。そこで、敢えて専門性をアピールポイントとすることは控え、イベントメンバー側も気負うことなく参加できるような企画内容としました。
2点目として、イベント参加者側の参加に対するハードルを下げる目的もありました。専門性を感じるイベントであった場合、ちょっと聞いてみたいレベルのライト層が参加を控えてしまうのではないかという懸念がありました。また、Unityの技術勉強会という濃いめで堅苦しい趣旨として受け止められてしまうのは、意図とも異なってしまいます。今回、当日のイベント来場者を見渡しても「技術者の集い」という趣旨のイベントにはならなかったため、「同じ目線で交流会を行う」という目指したい姿に対して一定の効果があったのではないかと感じています。
3. 詳細設計
ここからは、イベントの詳細を詰めていくにあたり、考慮した点について記載を進めました。基本的には、前段の理念や要素を盛り込むようなイベント設計となるように進めていきました。
3-1. イベントを開く上での目標
今回のイベントは冒頭にあった内容から逸れず、「出来るだけ多くの人がこれからを前向きな気持ちで迎えられるような感情を互いに共有する場の実現」としました。私本人の目標としては「複数人で開催するイベントに対して主催者として主体的に携わり、技術的な面での貢献によって成功へと繋げる実績を獲得すること」とし、成功要因は「発表者が制作したワールドの元へいろんな方が訪れ、経緯や想いを語らい合う機会を当事者として参加しつつ、光景を眺めること」としました。
また、私以外のイベントメンバーに対する想定目標としては、いずれの方も生産的趣味や何らかの活動をされている方と定め、「それぞれの生産的な活動がイベントを通じてより前向きに取り組めるようになること」を目指せるようなイベントの方向性としました。
イベント来場者については、いくつかペルソナがあるかと思いましたが、想定は2つに絞りました。1つは「これからワールド作りを進めていきたいと思う方々が、よりワールド制作に対して意欲を持って取り組めるようになること」としました。2つ目は「普段なにげなくワールド散策を行っている方々が、参加を通じて制作者の視点も視野に加わることで、よりワールド散策を深く楽しめるようになること」としました。
イベントを開くにあたって、来場される方の人数的な数値目標は詳細に定めませんでしたが、肌感覚で最低6名以上、目標10名以上にご参加いただけても妥当と思えるイベントのクオリティを目指しました。
3-2. イベントを共に行うメンバー
この節はイベントを成功させるにあたり、最も重要なテーマであると捉え、進めていきました。
普段、作業イベントは2名体制で実施を行っていましたが、今回はそれ以上の人数で実施することを想定としました。当初案としては、イベントとして主たる役回りのワールド制作者3~5名、イベント実施を支える役を私も含めた3名で想定していました。結論としては実質的にお声がけを終えた段階であった、合計6名での開催に落ち着きました。
まず、メンバーとしてワールド制作者を集めるにあたり、以下のポイントを意識しました。
・Twitterアカウントがわかる形でClusterで活動されている方
・過去、作業イベントに参加いただいた方
・または過去、快くワールドを案内いただいた方
これらを要素としました。前提として、私としてもイベント開催後も友好的な関わり合いが持てる方々と共にイベントを実施したいという想いがありました。そのため、上記に当てはまる方々に対象を絞り、予めTwitterなど拝見させていただいた上でお声がけを実施しました。また、「イベントさえ開催できるのであれば誰でもいい」という目線ではなかったため、Twitter上で不特定多数に対して希望者の公募をかける予定は初めから無く、人数が集まらなければ企画は取り下げる考えでした。内心、3/10時点では中止の方向性で意思を固めつつありました。
こうして振り返られている事自体、奇跡に近いレベルでありがたいことでもあり、発表者の方々には快く賛同いただけたこと、非常に感謝しています。(そもそも、あまりフレンドさんがおらず、お声がけできる方が4名しかいなかった状態で、3名以上を集めるために行動を起こすというのが中々に無謀だったとも感じます…)
また、イベント実施を支える役としては、おなじみ”時の行き交いメンバー”のHellPrideさんと普段Clusterで交流のあるお友達に声をかけさせていただきました。どちらの方々も発表者ではない立ち位置であるにも関わらず、実施側としての参加に賛同していただけたこと、非常に感謝しています。
3-3. イベント構成
この節では、実際のイベントの構成について内容とその理由をまとめていきます。余談として、この構成を採った背景として今年2月、とある日に座学後の案内をする一件のうち、案内の役回りを担当した経験から着想を得ています。
3-3-1. 冒頭パート
イベントとして一体感を持たせるという意味では、短いながらも個人的に重要度の高いパートであると感じていました。始めに主催者兼司会役として、私がイベントを通じて「来場者に対して何を届けたいと感じているのか」「どういった構成で進めていくつもりなのか」を長くなりすぎない程度に伝えられるよう、意識しました。
加えて、イベントメンバー全員について、最初の段階で紹介をすることによって、3名のワールド制作者のみが主役なのではなく、あくまでも6名全員がそれぞれ最適な役割として集い、イベントの開催に向けて共に作り上げていることが伝わるような紹介を目指しました。10回近く練習したこともあり、比較的想定どおりの内容を伝えることができたのかなと感じました。
3-3-2. 発表会パート
前半に制作したワールドについて発表するパートを設けました。発表時間3分、イベントメンバーからの質問2分、合わせて5分という構成としました。人が集中して聞ける時間はこのくらいであろうという推測より、時間を定めました。また、制作者側の発表に対する負担や聞き手側としての単調さによる聞き疲れを抑えるため、ぶっ通し5分という形式は採らずに途中で司会者から質問を挟む形式としました。
工夫点として、あくまでも後述の交流会パートがメインであり、イベント全体としての時間管理が乱れることを避けるため、ここでは来場者からの質問は受け付けず、交流会で聞けるような形式としました。来場者も興味深く聴講する姿を見ることができたため、結果として特段の問題もなく実現できたのかなという印象を感じました。
3-3-3. 交流会パート
後半として、実際に制作者がワールドを案内するというパートを設けました。1人あたり10分で順番に周るといった形式です。少し短いかとも感じましたが、「次に繋げること」も目標の1つであると捉えてみました。このイベント自体でワールドを満喫することを目指すよりは、また今度ゆっくり行ってみようかなという気持ちを持っていただけたら、成功と呼べるのかなと感じました。
実際、イベント来場者が後日に制作者のワールドに訪れている姿をお見かけしたので、意図に対して一定の効果はあったのかなと感じました。ワールド制作者も非常に力の入った案内をされており、真剣に取り組まれていることが伝わってきたこと、嬉しく感じました。
3-3-4. 感想会パート
最後にイベントメンバーから1人ずつ、感想を述べるというパートを行いました。今回、イベントの趣旨として「ワールド制作」のみに閉じず、各々の創作活動に対して発展性を持たせられるような構成を目指しました。そこで、イベントを支える側も含めて、1人ずつ自由に普段取り組まれている事柄について触れていただく時間を設けました。
これによりイベント来場者は、他のワールド以外の創作活動に対しても関心を持っていただくことができるような形式としました。ありがたいことに、イベント来場者も丁寧に最後まで耳を傾けてくださったこともあり、きっと今回発表したワールド以外に6名が実施している、生産的な趣味や活動に対しても関心を寄せていただけたのかなと感じます。
4. イベント準備期間
この章では、イベント当日を迎えるまでにあたって、実施した事項や意識したポイント、主たる担当箇所について整理していきます。
4-1. 意識したポイント
早期の顔合わせ
当初は、Discordによるグループメッセージベースでイベントメンバーの各々が作業を進めれば問題ないかと感じていました。しかし、一体感を持ち作業を行う上で「一度、全員で集まる」という行為は、成果物に対する向き合い方という面で、重要性が極めて高いことをのちに気づきました。なんとか2週間以上前の段階で顔合わせが成立したため、後半の作業に大きく響くという自体は避けられたのかなと感じます。
現実的に終わらせられる計画を立てること
開催日は決まっているものであり、あくまでも「終わらせる」ことが最重要事項であると捉えていました。そのため想定工数を念頭に入れつつ、目指す先を発散させ過ぎないことに意識を向けて取り組みました。
私自身、計画を立てて進めることが特別得意なタイプではありません。ただ、ゴールが明確で明瞭に定まっている場合においては、ある程度細分化することで進めるのは可能でした。そのため破綻が生じないような期日を想定しつつ、けじめることに注意を払って計画を立てていきました。
決められる項目は決めてしまうこと
一つ上の項目にも関連する内容ですが、来場者視点でそこまで影響が大きくない項目については、スピードを優先し「メンバー内で相談する」という工程を省きました。例えば、そもそもの開催日やイベントのタイトル、メンバーのイメージカラーなど、影響が大きくない箇所は「決め」で動いてしまうことで、ほかの作業に時間を回せるような状況を目指しました。
後工程が控えてるタスクは優先度を高めること
準備を進めるにあたり、前工程が完了していない限り終わらないタスクもあります。例えば私の担当では、後述の資料作成やワールド制作が挙げられます。メンバー間でのこのようなタスクについては、例え最終形ではなくても提出することに協力いただきました。また、全てが出揃うまで私が手をつけないのではなく、共有され次第に組み込んで進捗を共有することで、準備完了に至る状態を少しでも前倒しすることを目指して取り組みました。
主催者がボトルネックになる自体は避けること
準備を進める上で、内容についてコミュニケーションを取る機会が度々発生します。この際、確認が取れるまで、作業を進められない自体も想定されます。各々が作業を進めていく中で、私がボトルネック要因になってしまう状態は望ましくありません。そこで、極力応答までのレスポンスを上げることに配慮しました。(普段、私はあまり反応がよくないため、イベント開催まではと腹をくくり取り組みました。)
イベント準備に向けた提出物に対して、幅をもたせること。
予め準備が必要なものを各々が作成して提出いただくにあたり、前提として膨大な時間をかけて初めて完成する提出物では、間に合わないリスクが高まってしまいます。必ずしも、イベントメンバーの全員が充分な時間を準備期間に費やせるとは限らない中で、期日までに完了させる必要があります。
そこで、メンバーに用意いただく画像や資料については、既にあるものの流用を受け入れつつ、希望される場合は作り込みによって完成度を上げられるよう「幅」をもたせました。結果として、いずれの方々もイベント当日までに画像や資料など間に合いましたため、高い要求を前提として定めなかったことには、一定の効果があったのかなと感じました。
自らのワールドで開催すること
どのような形式であれ、自らが制作したワールドでイベント開催することを重要な観点と捉えました。もちろんCluster上には数多のワールドが存在し、私が制作するより質の高いワールドもあります。ただ、主催者として「公開可能なワールド制作スキルがある」ことをイベント来場者に視覚的に伝えることは、企画イベント自体に対して説得力を持たせる上で必須だと感じました。
仮に私がイベントの参加側であれば、そもそもワールド公開経験があるのか不明瞭な人の主催するイベントでは、発表者が話す内容に対してまでも説得力を欠く要因たりうると感じています。
きちんと役割・権限を移譲すること
あまり得意ではない領域でしたが、明確な担当割りについては注意して取り組みました。イベントメンバーに対し、きちんと担当としてお願いすることは、全体を進める上で非常に重要であると感じました。実際、主幹が曖昧になりかけていた項目については、まぁフォローが入るだろうという目線の実施状態に陥ってしまい、結果として期日に間に合わず、後工程側が負担を強いる結果となってしまいました。
また、イベントを振り返った中で反省する点として「担当者になった人は全てを一人で完遂させる」と捉えられてしまい、「担当者から別の方にも頼むことで、万が一のリスクケアまで含めてその役割を完遂させる」という視点に届いてなかった点が挙げられます。結果として、当日のバタつきの要因にもなってしまったため、複数人で物事を取り組むにあたり、この「役割」に対する考え方と認識合わせについては、今後も注意を払う必要があると感じています。
4-2. 主として担当した内容
以下、私が主として担当した内容とポイントについて、記載を進めます。
4-2-1. 全体管理
主催者として、自分を含めたイベントメンバー全員に対する当日までに必要な準備物の管理を担いました。これにあたり、連絡が取りやすいようDiscordサーバーを開設し、用途別にチャンネルを分割した上で準備物の共有が行える体制を構築しました。また、Discordについてはサーバー開設経験がなかったため、Udemyのe-learning講座を受講してイメージを掴んだ上で構築作業を進めました。
お互いをよく知らない関係性での連絡やデータ共有は、不安を感じてしまうかなと思い、あいさつ用の自己紹介チャンネルも作成しました。ただあまり意図が伝わらず、チャンネルでのあいさつは些末なものとして受け止められたのかなという印象もありました。全体を通して、一部期日を過ぎても連絡がなかったりと気を揉むケースも生じましたが、リマインドを入れつつ概ね想定の範囲内に納めることができたかなという印象です。
4-2-2. サムネイル作成
これまで作業イベントを通じて得た知見として、「イベントサムネイルの重要性の高さ」があります。特に、スマートフォン等のモバイル機器の場合は、サムネのみで内容を伝える必要もあり、重要性が更に高まります。また、Cluster内のイベントがパッと眺めた範囲では洗練された質のサムネイルばかりでは構成されておらず、差別化要素として充分に作り込む意義はあると感じました。
制作する上で意識したポイントとして、イベントの趣旨通りに特定の役割を持つイベントメンバーのみを強調した表現にならないような構成としました。また、淡い色合いで構成することによって、第三者から「技術者の勉強会」という堅さで受け止められないように意識しました。サムネを見た人から「ベテラン技能集団」のような高い期待を抱いてしまわないよう、文字のメインカラーを若葉のような緑色とし、色相環に沿ってメンバーを配置することで視覚的にも収まりよいサムネとしました。事前調査も含めて10時間ほど作成に要しましたが、開催日前までに興味を持っていただけた件数から見ても、有効に作用したと感じています。
4-2-3. 資料作成
イベント当日に来場者に向けて紹介する資料の作成を行いました。当初は、発表者用の画像資料のみあれば、成立するかなと感じていました。しかし、背景を知らない人にとっては、流れに沿った説明は求められるかなと感じ、資料作成を行うことと改めました。意識したポイントとして、イベント概要など、本題に入る前の項目については、極力最小限に抑えられるような内容に抑え、わかりやすさを重視しました。また、勉強会とは受け取られないよう、サムネイルと雰囲気の近い、カラフルな画像を資料に差し込むことによって、堅い雰囲気の漂わない資料づくりを目指しました。
デザインソフトを多様したため、普通の資料作成と比較して中々に工数の膨れあがる要因となりました。本編として、3名のワールド制作者に作成いただいた発表資料を挿入することで、一気通貫的に紹介できる構成としました。また、最後に1人ずつ自身の活動を紹介するパートも加えることによって、イベント来場者から見て収まりのよい構成になったのではないかなと感じました。
4-2-4. ワールド制作
イベント会場のワールド制作を行いました。ワールド全体として、1作目の公開ワールドと比較して、二周りほどエリアを広くし、資料投影スクリーンも大きいものとしました。1作目の公開ワールドは平面な空間のみで構成されていますが、会場に着くまで映画館のようなワクワク感を表現するため、今回はスロープ状の道のようなエリアを加えました。また、ワールド設計に干渉しない用、道エリアの外周に沿ってイベントメンバーの創作物を配置することで、ワールド自体をメンバー全員で作り上げているような印象が伝わることを意識しました。
また、私は挨拶されたほうがイベントの居心地がいいため、坂道を登りきった位置に簡易な受付スペースを作成しました。ワールド内の席配置については、多すぎるとスカスカ感を感じてしまい、逆に少なすぎると立ち見ばかりで窮屈さを感じてしまうため、どちらも考慮にいれられるような設計となるよう、工夫を行いました。結果として、圧迫感のない半透過の壁を設置し、その上を座れるような形状とすることで、収まりのよい構成としました。多くの人数が来場された時も安全なイベント進行を目指すため、スタッフ専用エリアの設置を行いました。
今回、あくまでも同じ目線で来場者と交流できることを意識していたため、段差はかなり低めの高さとしました。他、イベントメンバーのみで話し合いが可能なよう、スクリーン裏にスタッフルームの配置も行いました。そしてイベントの趣旨に合うよう、ここで会った人々の心の芽が育つような空間にするという思いを込めて、萌芽広場という名称としました。限られた時間の中で、新たな試みもいくつか加わるという難易度の高い内容でハラハラしましたが、無事期日内に完成させることができ、一安心した項目となります。
4-3. ほか作業内容
ほか、準備段階で携わった内容について、記載します。
4-3-1. イベントページ
Clusterのイベントページの作成を行いました。割合として、あまりイベントページの内容には凝らないケースが見受けられましたため、差別化の意味合いも兼ねて丁寧に記載を行いました。マークアップ言語を用いて、表や画像を挿入してできる限りわかりやすく記載してみました。また、イベント参加メンバーについては、全員分の創作物などのリンクも掲載することによって、関心を抱いたイベント来場者からわかりやすい内容を目指しました。
4-3-2. イベント会場の展示物
ワールド上に展示物の配置を行いました、私としては、Clusterのみに閉じたものにならず、Youtubeとの回遊性を高めたいという目的もありましたので、Youtubeなどの紹介イラストを作成しました。
4-3-3. 発表者への事前質問
イベントメンバーとして、事前に発表するワールド制作者に向けた質問事項の作成がありました。ここは主担当をイベント実施支援側の方に任せつつ、私は案だしとして参加する形式となりました。結果的に当日、無事にイベント進行が行えたため良かったかと感じています。
反省点として、前述の通り発表時間のうち2分程の尺という前提があるにも関わらず、かなり余裕をみた質問数となった状態で共有されることとなり、ワールド制作者目線では準備の負担増要因になってしまったかなと感じました。私自身として、あまりきちんとタスク制御ができておらず、直前にワールド制作者側からもフォローを入れてもらったりとバタついてしまっていた件でもあるため、次の機会があれば目的に焦点を合わせてシャープに実施できたら良いのかなと感じました。
4-3-4. ハロークラスターでの告知
ハロークラスターというCluster公式が主催するイベント紹介が可能な企画がありましたため、そちら場での告知をイベントのメンバーと実施しました。30秒と時間が限られていたため、事前の原稿を用意した上で望みました。いざ発表中、通信が落ちたことで中途半端な発表になってしまったのは残念な点です。
ただ、画像を見ただけでも内容の伝わるサムネイル作りとしていたため、一定の関心へと繋がったのではないかと感じています。直前期は準備に時間が必要であろうと想定し、1週前のタイミングで告知を計画し行いました。ほか、有志のイベントメンバーに3日前での告知を行っていただいたこともあり、結果として多くの方が来場されるきっかけになったと感じています。
4-3-5. リハーサル会
イベントメンバー間で直前に集まり、内容や流れについて認識合わせを行う場を日程調整した上で設けました。私の担当区分としては、資料の状況やワールドの状況について確認が取れたことで、当日のトラブル回避にもつながったため、結果として実施の効果はあったと感じています。また、他のイベントメンバーについても発表、案内、移動など流れを確認できたことで、当日のモタモタは最小限に抑えることに繋げられたのかなと感じています。
5. イベント当日
ここでは、イベント当日に対する気づきについて振り返ろうと思います。
5-1. 気づき
想定よりも多くの方にご参加いただけた
イベントの設計上、二重カウントされてしまっていますが、Cluster上での延べ参加人数は154名と集計されていました。イベントメンバーのフレンドさんが来場されているように見受けられるケースもありましたが、それを差し引いても充分に「何をするか」という内容に興味を持っていただいた上でお越しいただけたのかなと感じます。
普段のCluster作業イベントとは大きく違った点として、多くの方が開催時間前に来場されていたという事項が挙げられます。当日たまたま見かけたから来たというよりは、事前に関心を持った上で来ているということの表れかと思いますので、準備に長い時間をかけた身としては非常に喜ばしいことでした。また、過去Clusterイベントを開催したときにご参加いただいた方もお見かけできましたので、嬉しく感じました。
懸念していた来場者トラブルは生じなかった
人が集まる場所において、場を荒らすような方が訪れる事例は起こりうることを聞き及んでいました。今回のように多くの人に対して開催呼びかけを行った場合、トラブルの種まで引き連れてしまい、結果としてイベントで気持ちが一つになるという目的が達成されないリスクを懸念していました。幸い、そういった事例には遭遇せず、終始進めやすくイベントを行うことができましたため、全ての来場者のマナーに支えられ、実施できました。
メンバーの高い臨機応変さを感じた
実際のイベント当日の状況で、主にワールド移動という点を中心としたトラブルが生じました。客観的に映像で振り返った際、イベントメンバー側はその場その場で考えて行動をされていたことも確認でき、非常に心強く感じました。私は事前に想定を洗い出した上で行動に移すことには、比較的自信がありますが、咄嗟の判断に優れている側ではないため、落ち着いて整理することも重要だな視点だなと学びました。
6. 全体を通した振り返り
6-1. 学んだこと
イベントを主催することで、多くのことを学ぶ機会を得ることができました。期限を決めて前に進めることの重要性や提出物が共有されるタイミングを見越した先行作業など、実際に企画進行に向けて行動する中で発見できた部分がありました。
ほか、得られた大きな発見として、緻密な設計の重要性の高さでした。企画にあたって全体感を見渡す必要があり、細部まで詰められてない箇所も多々ありましたが、根幹は盤石であったこともあり、様々な結果は事前推測から大きく外れることがなく、後追いで付いてくるような印象を受けました。また、個人的に想定より大きな負担として感じた点としては、全体の進捗管理や妥協点探しに係る調整コスト、資料作成に対する稼働が挙げられます。早期の認識合わせによる目的に対する目線を揃える大切さも学びました。
6-2. 反省点
イベントの開催を通じて、反省点もたくさんありました。振り返ってみると、もう少しイベントメンバーに対して、信頼を寄せるような精神性でもよかったのかなという印象を受けました。他には、モチベーションの足並みを揃えることに対する難しさも学びました。実際に発表するワールド制作者と比べて、イベント実施支援側の方々はメリットが同等にはならないことが、本イベントに対する姿勢の度合いで若干影響したのかなという印象を受けました。準備期間中、メンバーの役割を活かしきれるような設計が大切なのかなと感じました。
また、情報をシェアする大切さへの理解度の差も盲点でした。イベントを振り返ってみると、事前にイベントメンバー間でアウトプットの共有が実施されていれば、当日に発生を回避・軽減できた事象も確認されました。私自身、必須とまでは捉えておらず、担当者が任意で実施してくれればいいかなくらいの緩い判断をしていました。この点がやがて影響を及ぼす要因へと繋がってしまったため、メンバー間での担当分野の情報シェアによるリスクの洗い出しは、意識的な後押しが大切なのかなと思いました。ほか、イベントメンバー間での目的に対する理解の深さの差も感じました。限られた共有タイミングの中で、齟齬なく伝えられることは課題かなと感じております。
これらの反省点を踏まえつつ、今後の活動はより素敵な方向性へ繋げていければと感じています。
6-3. 最後に
今回のイベントを通じ、開催する目的として目指していた「出来るだけ多くの人がこれからを前向きな気持ちで迎えられるような感情を互いに共有する場の実現」は無事に成功しました。これは、今回イベントに協力いただいたメンバーの力があってこそ、初めて成立したものであり、非常に感謝しています。また、イベントに来場してくださった方々にも同じように感謝しています。自身の需要に対する推測を元に恐る恐るイベントメンバーにお声がけした際に賛同頂けた瞬間、イベント終了時の来場者からの温かいコメントを頂いた瞬間、この2つの時を得ることができた点は、私の活動にとって貴重な1ページとなりました。
今回のイベントを通して、自分自身の成長や可能性、人々と交流することの大切さを再認識することができました。今後の活動でも学びを生かし、より活動に対して前向きな気持ちで取り組んでいけたらなと思います。